Jリーグが、「Kick Off」と言う番組を地方局30局で各地のクラブを取り上げる番組としてスタートした話のポイントは「Jリーグの肝いりで」と言う話だ。それが可能なのはJリーグが潤沢な資金を持ち、自ら動くことができるからだ。
NPBにはこうしたことは絶対にできない。NPBは、オールスター戦、日本シリーズ、侍ジャパンの試合の興行収入と、各球団から入る年1000万円の会費だけで運営されている。
ペナントレースの興行収入や試合の放映権は、12球団に個別に入り、NPBには一切入らない。そしてNPBには何の権限もない。

「運営形態が違うのは、組織が違うからだろう、どっちだっていいんじゃないか」

と言うかもしれないが、この2つの違いは、決定的な差になっている。

これが顕著に表れたのがDAZNとの交渉だ。
プロ野球は12球団が個別で契約している。広島は地元テレビ局に義理立てして契約していない。中日も部分的にしか契約していない。巨人も永らく契約していなかった。またNPBもDAZNと契約していないのでオールスター戦や日本シリーズも放映していない。
個別の契約になると、企業規模の差がモノをいう。DAZNは巨大な国際企業だが、NPB球団は売り上げ数十億~300億の中小企業だ。交渉の主導権はDAZNにある。各球団は年間数億円程度の契約で放映権をDAZNに販売している。全部合わせても年間数十億円程度だ。

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しかしJリーグはDAZNと2017年に10年2100億円(2020年に12年2239億円)という大型契約を結んだ。日本のプロサッカー全てを統括するJリーグとDAZNは、台頭の立場で交渉することができたのだ。
プロ野球の場合、DAZNは常に「契約できなくても構わない」と言う姿勢になるが、Jリーグ全体となると日本でのスポーツ視聴をビジネスとするDAZNにとって、必須の交渉相手であり、包括的な大型契約を結ばざるを得ない。

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「でも、Jリーグは30クラブもある。NPBは12球団だから、1クラブ、球団単位なら似たような金額じゃないのか?」

と言う声も出そうだ。NPB球団とDAZNとの契約は年間5億から十数億、Jリーグは単純にならせば6.2億だから似たようなものに思えるかもしれないが、試合数はNPBは公式戦だけで年間1716試合、Jリーグは1100試合程度であり、1試合当たりの放映権では倍近い違いになる。

JリーグはDAZNとの契約金をそのまま各クラブに分配しているわけではない。一部は分配するが、この資金をもとに前述の「Kick Off」など番組のスポンサーになったり、サッカーの普及活動につかったり、様々な事業を展開している。Jリーグはワールドカップなど国際試合の興行権も得ているから、資金は潤沢だ。この資金を背景にトップセールスしているのだ。

NPBは、年間10億程度の予算しかない。リーグの事務局機能を果たしているに過ぎない。

Jリーグのやり方は、MLBとほぼ同じだ。MLBが大胆な政策を展開できるのも巨大な資金を持っているからだ。

ソフトバンクの孫正義オーナーは球団を買収した時に、MLBと同じように12球団をまとめてビジネスができるスタイルにすべく動いたが、セ・リーグ球団の権利関係は極めて複雑だったので断念し、パ・リーグだけでPLM(パシフィックリーグマーケティング)を設立したという経緯がある。

NPBとJリーグではスケールメリットの違いがあるのだ。これが決定的だ。


NOWAR


1960~62年柿本実、全登板成績

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